ガリ勉くんに愛の手を
佐奈は裸足になって海に足をつけ、おおはしゃぎだ。

「キャー!気持ちいい!」

佐奈の言葉に僕もちょっとだけつけてみたくなった。

やっとの思いで海辺までたどりついたところでいきなり水しぶきが…

「ベン、そりゃ~!」

「うおぉ~、冷たい!」

全身、鳥肌が立った。

(佐奈さんの嘘つき!)

海水はかなり冷たい。

僕のいやがる姿が面白かったのか佐奈は何度も水をかけてきた。

(くやしい~!
よし僕も負けません。)

佐奈に仕返ししようと両手を海の中に……

その瞬間バランスを崩し、見事に海にはまってしまった。

服もびしょ濡れだ。

「ヒャッー!
 つ、冷たい~!」

真冬の海、とても寒い海。


でもなんでだろう。

この温かい感じは……

体の中がぽかぽかとまるでカイロを入れているよう。

「ほんま、どん臭いな~。」

佐奈がお腹をかかえて爆笑している。

思いっきりみっともないところを見られて恥ずかしかった。

でもなぜだか自然に笑顔がこぼれている。

こんな風に遊ぶのは何年ぶりだろうか?

たぶん、遠い昔……
小学生の頃。

それからはずっと勉強漬けの毎日を送ってきた。

懐かしい思い出が僕の脳裏を駆け巡る。
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