ガリ勉くんに愛の手を
翌朝。

佐奈に一日中付き添っていたおじさんも座ったまま寝むっている。

窓から一筋の光が差し込む。

まぶしさのせいか佐奈が目を覚ました。

意識はまだモウロウとしている。

ゆっくり辺りを見渡す。

(ここは… 病院?)

ベッドに横たわっている自分。

そして、その手をしっかり握っている人。

(おっちゃん?)

起き上ろうとしたが急に下腹が痛くなった。

その痛みのせいで昨日の出来事が現実の事だと思い知った。

(う、うち……)

あの時の恐怖が一瞬でよみがえった。

佐奈の体が反射的にブルブルと震え出した。

(そ、そうや。うち、レイプされたんや……)

自然に涙があふれ出る。

(いやや、いやや…)

心の中で何度も叫ぶ。

布団を頭の先までかぶってこの現実から逃げ出したかった。

(なんで?こんな事に…)

目の前に浮かんだ顔。

(ベン…
   …ごめん…)

佐奈は悔しさと悲しみで涙が止まらなかった。



それから二日後、佐奈は無事退院し、おじさんに付き添われ家に戻った事を知った。

僕は佐奈にどんな顔をして会えばいいのか分からず、一度もお見舞いに行かなかった。

(佐奈さん……)

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