ガリ勉くんに愛の手を
駅から離れた例のカフェで真理亜は誰かを待っていた。

「よぉ!待たせたな。」

この前[アルバイト]を頼んだ達也が現われた。

真理亜は人目を気にしながら小声で話し出した。

「あんまり時間がないの。で、どうだった?
うまくいった?」

達也は一瞬迷ったが何食わぬ顔であの事を報告した。

「言われた通り、やったで。
案外、かわいい女やったわ。」

その言葉に真理亜はムッとした表情を見せた。

「聞かれた事だけで答えればいいのよ。
…じゃあ、うまく行ったのね?」

真理亜のごう慢な態度に達也はムカついたがお金の為に我慢した。

「まあ、当分立ち直られへんやろ。
ところで真理亜、この前…

あの女、遊び人やって言うてたけど初めてみたいやったで。
ちょっと触っただけでもビクビク震えて怖がってたしな。
相当ショック受けてるはずや。」

「そう。」

意外な事を知った真理亜はうれしくてたまらなかった。

(この事を知った勉くんはどう思うかしら。
あの女を絶対嫌いになるに違いない。)

そんな真理亜を見て達也は自分以上のワルだと感じた。

「ところで例の報酬は?」

「ああ、わかったわ。」

バッグからお金の入った封筒を取り出し、手渡した。

達也はすかさず、中身を確認した。

「いいわね。私たちはこれっきりよ。
二度と会う事も話す事もないから。」

達也もうなずいた。

そして何も言わず去って行った。

(ふん、あんな男、ただの野良犬よ。

エサを与えれば何でも言う事をきく。

役に立つヤツ…で、タツヤ…か?)

「フフッ… フフフ…」

計画は見事に成功した。

そう真理亜は一人確信していた。
< 76 / 401 >

この作品をシェア

pagetop