ガリ勉くんに愛の手を
今日も無事バイトが終わった。

電車に乗って窓際にもたれかかる。

もう11時半か…

(はぁー、結構…
僕、頑張ってるよね。)

窓に映る自分に向かって励ましの言葉をかける。

あの事件から、もう1か月。

まだ佐奈は店に一度も顔を出さない。

その間、僕が佐奈の代わりにずっとバイトを続けている。

どんなに苦しくても…
どんなに辛くても…

弱音を吐かずがんばっている。

いつかきっと佐奈が戻って来てくれると信じて……


― 佐奈のアパート ―

佐奈はあの事件以来、ずっと家にこもったまま。

おじさんや店に迷惑をかけている事はわかっている。

本当に申し訳ない。

でも心に深い傷を負ってしまった。

(おっちゃんにも、ベンにも、あわす顔ない…)

ずっと気になっている。

(みんな元気かな?うちがおらんでも大丈夫かな…)

もうこんな生活、ウンザリしていた。

じっとしているのは相に合わない。

わかっている。

でも自分からは行き辛い。

何かきっかけがあれば……


(ちょっと、散歩でもしてみようかな。)

思い切って出かける事にした。

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