ガリ勉くんに愛の手を
高校2年の夏休み。

この時期、塾の本格的な追い込みが始まろうとしていた。

今までの勉強の遅れを取り戻すため、僕は真剣にがんばった。

一方、店では…

空を見ながら、ボーっと座っている佐奈。

まるで何かに取りつかれたように…

「佐奈、えらい最近元気ないな~
ベン来てないからか?」

知っているくせにわざと聞いてくる。

「全然、関係ないわ。
あ~この店も暇やし、そろそろつぶれるんかな~って心配してんねん。」

「な、なんやて?!そ、それはないやろ?!!」

おじさん、マジで動揺している。

確かに最近、表通りに新しいお店がオープンしたらしい。

ここと違って、おしゃれな感じが若い子たちにうけて客がどんどん流れているのも事実。

「なあ、佐奈。この割引券、駅前でまいてくれへんか?」

佐奈はおじさんから受け取った割引券を見ながら、

「何これ?!たこ焼きと飲み物セットで500円。
…500円?!」

佐奈は目を丸くして驚いている。

「おっちゃん、こんな安くしたらこの店ホンマにつぶれるで。」

「ええねん。客取られるよりマシや。」

おじさんが出した苦肉の策だ。

「おっちゃん本気?」

この店がなくなったら困るのは佐奈も同じ。

「よっしゃ、わかった。うち300枚でも500枚でもこれ全部なくなるまでまいてくるわ。」

気合いを入れて早速行動開始!


― 駅前 ―

佐奈は大きな声をはり上げながら、一生懸命割引券を配っていた。

でも佐奈の派手な格好は逆効果だ。

多分、風俗か何かのチラシだと思われているのだろう。

みんな受け取らず、素通りして行ってしまう。

(なんやのん、一体!
割引券を配ってるだけやのに、いらんって言うの?!)

こんなんじゃ全然なくならない。

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