誓~天才演技者達の恋~


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「ウッ...たぁー」


ユリアが目を覚ますと、そこは自分の家。

もちろんユリアは、日比野邸に行ったことを忘れてしまっていた。


「疲れが溜まっていたのね。スタジオで倒れたのよ」


香織は優しく微笑みながら、ユリアに近づく。

ユリアは辺りを見渡して、ため息をついた。


「変な夢を見たわ...やけに暖かくなる夢」

「....」

「懐かしいって言えばいいのかしら...?まぁ、記憶が無い私が言うのも、変な感じだけど」


ユリアはネックレスを握り締めながら、ニコリと笑った。

香織は内心複雑で、ユリアを見る。


「...修学旅行、どうする?」

「どうする?どうするも何も、行きますよ。賢斗もいるし」


ユリアは旅行鞄を見つめながらそう言うと、さっそく準備を始めていた。

香織はどうしようもない気持ちになりながら、ユリアの部屋を後にした。


「消えて行っちゃうのね。前の百合亜」


香織の囁きはユリアには届かない。

鼻歌を混じりながら、ユリアは荷物を詰め込む。


「あれ?もうパンパンッ!」


旅行鞄と戦いながら、ユリアはテレビをつける。

何度見ても、自分が出ているCMは恥ずかしい。


「日比野卓也...“あいつ”もロンドンって言ってたわ」


ユリアは忘れていた。

いや、忘れてしまっていた。


抱きはじめていた気持ちを...。


そして白野百合亜という、奇跡に近い存在を。

このネックレスが、どれほどのモノを呼び起こすかを知らぬまま...。

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