誓~天才演技者達の恋~
「まるで、演技の才能が邪魔って言っているようだな」
「私の考えは..間違ってるの?」
確かにユリアに演技力が無ければ、今苦しむことも、孤独に感じる必要も無いのだろう。
もし、白野百合亜に演技力が無ければ、事故に遭うことも。
両親を失くす事も、記憶を失くす事が無かったかも知れない。
「間違っちゃいない。少なからず正論だ」
「じゃあ...どうして?どうして家族と記憶を失うことが、私の生き残った代償なの?」
「あんたが、誰よりもその力を持ってるから」
「そんなの理由じゃない!!」
ユリアはソラに響くほどの大声で叫んだ。
「私が欲しくて、手に入れたモノじゃない。」
「でもあんたは、そのモノを大切にしていた。家族よりも記憶よりも」
「...そんなハズ...無い」
「じゃあどうしてあんたは、記憶を失っても演技者に戻った?」
ユリアはフッと、演技の感覚を思い出していた。
役になりきれるという達成感。
舞台の上で貰う拍手。
そして、ある一人の笑顔.....
「あっ...私...大事なこと、忘れてる...」
「あんたは日比野卓也と幼馴染だった」
「.....」
「お互いに特別な感情を持ちながら、成長していった。」
物心ついた時から、卓也は百合亜に特別な感情を抱いていた。
それは百合亜も同じ。
ただ、好きと伝えることが出来なかった。
いきなり百合亜がスターになったという理由が一つ。
そして何よりも、お互いが夢を叶えるまでは何も伝えないということ。
「旅立つ直前、何であんたは、卓也に想いを伝えた?」
「....知らない...わかんない...」
「怖かったんだろう?卓也がこの世界に足を踏み入れなければ、永遠に二人のハッピーエンドは無いから」
「.......」
「あんたは、卓也を急かしたんだ。知ってるんだろう?
―――――――卓也はもう死ぬって」