誓~天才演技者達の恋~

「まるで、演技の才能が邪魔って言っているようだな」

「私の考えは..間違ってるの?」


確かにユリアに演技力が無ければ、今苦しむことも、孤独に感じる必要も無いのだろう。

もし、白野百合亜に演技力が無ければ、事故に遭うことも。

両親を失くす事も、記憶を失くす事が無かったかも知れない。


「間違っちゃいない。少なからず正論だ」

「じゃあ...どうして?どうして家族と記憶を失うことが、私の生き残った代償なの?」

「あんたが、誰よりもその力を持ってるから」

「そんなの理由じゃない!!」


ユリアはソラに響くほどの大声で叫んだ。


「私が欲しくて、手に入れたモノじゃない。」

「でもあんたは、そのモノを大切にしていた。家族よりも記憶よりも」

「...そんなハズ...無い」

「じゃあどうしてあんたは、記憶を失っても演技者に戻った?」


ユリアはフッと、演技の感覚を思い出していた。

役になりきれるという達成感。

舞台の上で貰う拍手。

そして、ある一人の笑顔.....


「あっ...私...大事なこと、忘れてる...」

「あんたは日比野卓也と幼馴染だった」

「.....」

「お互いに特別な感情を持ちながら、成長していった。」


物心ついた時から、卓也は百合亜に特別な感情を抱いていた。

それは百合亜も同じ。

ただ、好きと伝えることが出来なかった。

いきなり百合亜がスターになったという理由が一つ。

そして何よりも、お互いが夢を叶えるまでは何も伝えないということ。


「旅立つ直前、何であんたは、卓也に想いを伝えた?」

「....知らない...わかんない...」

「怖かったんだろう?卓也がこの世界に足を踏み入れなければ、永遠に二人のハッピーエンドは無いから」

「.......」

「あんたは、卓也を急かしたんだ。知ってるんだろう?

―――――――卓也はもう死ぬって」
< 214 / 252 >

この作品をシェア

pagetop