誓~天才演技者達の恋~
由梨の言葉に何も反応せずに、卓也は門をくぐる。
由梨もまるでカップルと言わせるような雰囲気で、門をくぐる。
「どうしてここに受かったのかは、分かってるよね??
ここはね。
芸能プロダクションに所属してないと試験も受けられないんだよ。
だからね...」
「由梨には...歌原プロダクションには感謝してるよ。」
力ない瞳で卓也は呟いた。
数ヶ月前...。
由梨は卓也をスカウトした。
自分の欲望のために...。
「早く行かないと...
トップ生徒になったんだし」
「そうだな」
由梨は卓也から離れて、卓也を見つめる。
両手を握り締め、悔しそうに唇を噛む。
「死んだのよ...
白野百合亜は死んだのよ!!
なのになんで??」
由梨は小さく呟いた。
そして力なく笑った。
「私じゃ...駄目なの??
演技をさせてあげる....のに。
ここにいれるのは、私のおかげなのに」
明華の芸能科に入学するには、とっても厳しい条件があった。
1,人並み以上に学力が優れていること。
2,人並み以上に運動能力が優れていること。
3,どこかの芸能プロダクションに所属していること
4,演技の才能が十分にあること又は、業界で生き残れる能力があること
他にもたくさんあるが、有名なのがこの4つだった。
卓也はこの条件の3つ目をクリアしていなかった。
それを知っていた由梨はグッドタイミングで卓也に近づき、見事に歌原プロダクションに卓也を所属させることが出来た。
でも由梨は満足していなかった。
卓也は百合亜が死んでから...
一度も人に笑顔を見せていなかった。