誓~天才演技者達の恋~

後ろの席の客



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ユリアは白いワンピースに身を包み、鏡の前で一回転した。

香織はその様子を笑顔で見つめる。


「似合いますか?」

「えぇ、似合っているわ」


「良かった」と呟くと、ユリアは賢斗から貰ったネックレスを首にかけた。

香織はチェーンの下にある髪の毛を、チェーンの上にやる。


数ヶ月前ほど。
咲子の診察室で泣き崩れたユリアは、そのまま眠りにつく様に眠っていた。

翌日に目を覚ましたユリア。

もちろんユリアは綺麗さっぱりと、明日亜に会った事を忘れていた。

ユリアの中では、ただの睡眠という思いらしい。


「頭が痛くなったら、すぐにワンコールするのよ」

「はい。分かりました香織さん」


ユリアはドレッサーの上に乗った、ついこの間新調したばかりの眼鏡を鞄に入れる。

香織はその様子を見て、すぐさま眼鏡ケースを渡す。


「そのまんまだったら、眼鏡のレンズが傷つくわ」

「あぁ、ごめんなさい。そして、ありがとうございます。香織さん」


ユリアは眼鏡を、眼鏡ケースに入れると、鞄に入れて靴を履く。

香織はその一連の動作を見ながら頷く。


「では、香織さん。賢斗の演技見てきます」

「気をつけてね。」

「はい!」


ユリアは勢い良く、家か飛び出すと、和人の運転する車に乗り込んだ。

和人も突然の登場に驚いた様子。

それでも平然を装い、あいさつをする。


「おはようございます、ユリアさん」

「おはようございます、室井さん。」


挨拶を終えると、和人はハンドルを握った。

ユリアは後期演戯祭のパンフレット(仮)を見ながら、顔を綻ばせていた。


「楽しみだなぁ~演技ぃ~」

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