oneself 後編
色営業をする側に対して、騙される側の客の事を色彼と呼ぶ。


例えば、あたしの本彼は勿論哲平で。


付き合っていると思っている前田さんは、色彼になる。


哲平の本彼はあたしで。


哲平の色営業に騙されている客は、色彼になる。


きっと誰だって、その愛情は本物だと信じたい。


実際、それが本物か偽物かの判断は難しかったりする。


あたしの場合、高校からの付き合いがあるから信じているけれど。


ハル君は九州から出て来ており、最初の頃は寮に住んでいた。


翼と体の関係が出来た頃には、翼のマンションに良く泊まりに来ていると聞いていた。


最近は口癖のように、「あたしはどうせ色彼なんだよ」とぼやく翼とハル君の関係は、本物なのか、偽物なのか…


正直、あたしには分からなかった。


最近、哲平はあたしの前でも平気で客と電話をするようになった。


「今は家におるで」


本当はホテルのベッドの上で、あたしと一緒なくせに。


「俺は色なんかせえへんし」


本当は何人かは、色で引っ張っているくせに。


そんな光景を見てしまったら、翼に軽々しく大丈夫とは言えなかったんだ。


勿論、翼が本彼であって欲しいという思いはあるけれど。


最近はかなりの額を使っていると聞いていたので、正直少し心配だった。


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