最後の恋
「楽しいクリスマス過ごせました?」
だけど、大きな声が後ろから響く。
「私は最低最悪なクリスマスになりましたけど」
わざととしか思えない声のボリューム。
こういうところ、女はめんどくさい。
若いからさらに厄介だと感じた。
「早川さん、あのね」
振り返ると、周りからの視線が私に集まっていた。
思わず俯いて、声が小さくなる。
「ごめんなさい。本当に悪かったと思ってる…」
「何をですか?」
「……」
「何を悪かったと思ってるんですか?」
「ちょっと早川さん!」
意地悪な答えで私を黙らせる早川さんに、佐倉さんがそう言いながら駆け寄った。
「松永さん先輩なんだから」
「え?先輩って後輩社員の好きな人横取りとかしていいんだ?」
「えっ…いや、そういうんじゃないんだけど…でもさ、もう仕事始まるし」
「はいはい。でも佐倉さんも気をつけた方がいいよ?」
「えっ?」
「桐谷君、とられないように気をつけてね」
早川さんがそう言うと、佐倉さんは気まずそうに黙りこんだ。