最後の恋
帰宅すると、コートも脱がずにソファにどさっと腰をおろした。
冷え切った家の中の空気。
とても静かな部屋だ。
一人暮らしを始めたのは入社した年の夏だった。
最初は寂しかった。
暗い家に帰り、自分で電気を付ける行為がどうも好きになれなかった。
今でもそうだ。
誰もいない家に帰ってくるのはやっぱり寂しい。
実家にいる頃は帰宅時間が遅いとか口うるさく言われたこともあったけれど、帰るとなんだかんだでいつもお母さんは私におかえりと言って迎えてくれた。
どんなに遅くなっても、そうだった。
一人暮らしをしていろんなことを知った。
掃除も洗濯も料理も。毎日お母さんはこんなことをしていたんだとか。
家事ってなんてめんどくさいんだろうって思ったり。
慣れるまで結構時間がかかった。
そのせいか、実家に帰った時はものすごくホッとした。
とてもラクに感じた。
そして何より、明かりの灯った家に帰ることができるだけでなんだか幸せに感じられた。
もうすぐ年末年始の休暇に入るし…久しぶりにゆっくりしよう。
なんだかんだでお盆休みから帰っていない。
帰ろうと思えば帰れる距離なのに。