最後の恋




「急にごめんね、早川さん」


「あっ、いえ…大丈夫です」


「で……あのさぁ、今日って夜、予定あったりするかな?」



いきなり声をかけてきたかと思ったら、爽やかな笑顔で大原くんは早川さんにそう聞いた。


営業部の大原トモキ。

彼は私と同期入社で、年齢も同い年の29歳。


私のいる総務部とは部署が違うけれど、営業部とは同じ階のお隣同士なせいか、今まで何度か同期が集まる飲み会や多部署混合の歓送迎会などでは同席することがあった。

だからまぁ、普通に挨拶は交わす。

エレベーターや給湯室なんかで一緒になれば話をするような関係だ。


とはいえ、私は大原くんからこんな風に予定なんて聞かれたことは一度もない。


だからこそ、というか。

この表情を見ていると伝わってくるものがある。


要するに、予定がなければ食事でも…ってパターンでしょ?




『あ〜……特にナイですけどぉ……』




さっきまで、アクビしてた早川さん。


きっと内心、ちょっと面倒くさいとか思ってそう。



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