最後の恋
もう終わったこと。
わざわざ思い出す必要なんてない。
思い出すような思い出じゃない。
全部ウソだったんだから…
「莉奈!」
「あっ!サキ」
式場に着くと、すぐに入口でサキとバッタリ遭遇した。
「ついに来たね、この日が」
「だね、莉奈緊張しない?私何だかすっごく緊張してるんだけど」
「ははっ、サキっぽい。私は緊張っていうよりもちょっと寂しいかな。エリの花嫁姿見たら泣いちゃうかも」
私がそう言うと、サキはウンウンと頷きながら私の背中をぽんっと優しく押した。
「そういえばさ、莉奈、あれからどうなったの?」
式場の中を進みながら、交わす会話。
「えっ、あぁ、あれね…」
言葉を濁すと、サキは何かを察したように言った。
「あっ、ま、今日はいいや。またゆっくり聞かせて?」
「うん」
空気で感じとってくれる関係。
ものすごくラクだと改めて思う。
「新婦側の受付を頼まれている松永と田中なんですけど」
その時ちょうどすれ違った式場のスタッフに声をかけると、その人は丁寧に受付への案内をしてくれた。
そして受付開始までまだ20分ほどの時間があると説明された私達は、エリの親族の控え室に挨拶に向かった。
「莉奈ちゃん!あ、サキちゃんも!」
控え室をノックしてドアが開いたと同時に大きな声が響く。
「ご無沙汰してます」
「お久しぶりです」
挨拶しながら頭を下げると、エリのお母さんが嬉しそうに私達を中へと引っ張ってくれた。
「本当何年ぶりかしら?二人とも綺麗になったわね、ねぇ、お父さん」
「あぁ、そうだな。すっかり大人の女性になったなぁ」
目を細めながら懐かしそうに私達を見るエリの両親。
「今日の結婚式、私達が受付をさせてもらうんです」
「華やかな女子二人組でしょ?」
サキがそう言うと、おばさん達はにこやかに笑った。
「ありがとう、莉奈ちゃんサキちゃん」
「これからもエリのこと、よろしくお願いします」
そして何だか改まったみたいに、二人は私達にゆっくりとお辞儀をした。
「もう!何かもう泣いちゃいそうなんですけど」
明るくそう言ったけれど、私は本当に泣きそうだった。
エリは一人娘で、
ずっと大事に大事に育てられてきた。
門限が厳しかったり、若い頃はよく怒られていたけど、それも思い返せば大切にされ、想われていたからだ。