最後の恋


だけど、頭の中は真っ白。

何から話せばいいのか分からなかった。


言いたいことは、ありすぎるくらいたくさんあるはずなのに…うまく言葉が見つからない。


スーッと息を吸い、ゆっくりと吐き、気持ちを落ち着かせた。



そして…



「エリ、シン君、ご結婚おめでとうございます。ならびに、ご両家の皆さま、本日はまことにおめでとうございます。このようなおめでたい席にお招き頂き大変光栄に思っています」


震えながら、並べていくだけで精一杯の言葉たち。

どうしよう。

次に出てくる言葉がなかなか見つからない。


会場のシーンとした空気。私に集まる視線。

緊張に押しつぶされそうだった。


だけどその時。


「莉奈!」


と、エリが私の名前を呼んだ。

目が合う私達。

エリは私をジッと見つめながら、優しく頷いてくれた。


大丈夫、緊張しないで。

そう言われたようで、私もエリにうん、と頷き返した。


私の言葉でいい。

ありのまま、伝えよう。

そう思った瞬間、肩の力が抜けた気がした。


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