最後の恋


「お母さんとお父さんが一番嬉しいのは、莉奈が幸せなことよ。安心するのは、あなたが毎日笑っていられることよ?莉奈が幸せなら、それが一番お母さん達にとっても幸せなの」

「……っ…」


泣いちゃダメだ。

泣いたら、もう後戻りできなくなる。


「莉奈はサトル君と結婚して、幸せになれる?毎日笑っていられる?もし莉奈が少しでもその自信がないのなら、結婚はやめなさい。お母さん、そんな結婚なら認めないわ」


お母さんはハッキリとした口調で私に強く優しくそう言った。


「…っ…お母さんっ…私…親孝行…したいのっ…」

「今でも十分してくれてるじゃない」

「お兄ちゃんみたいに…私も孫の顔…見せてあげたい…」

「ふふっ、これ以上うるさくなったら大変よ。家が壊れちゃうわ。それに、結婚したからって子供が出来るなんて分からないのよ。簡単じゃないの。産めない人だっている。そしたらあなた、サトル君と二人で生きていかなきゃいけないかもしれないのよ?」



サトルと二人で?

一生、ずっと二人きりで?


「よく考えなさい。お父さんと竜二のことは気にしないでいいから。莉奈の気持ちが一番よ。分かった?」

「……んっ…」

「また電話するから。明日仕事でしょ?早く寝なさいね」

「うん…っ…」



電話を切った瞬間、私は張り詰めていたものが切れたように声をあげて泣いた。


一人でバカみたいに、ただ泣き続けた。



お母さんは、気付いていた。

そしてサトルも、気付いてた。


私の気持ちがあの場所になかったことを…気付いていたんだね。


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