【短編】咎(とが)
家庭科が終わって、教室に戻ると、このクラスで一番成績のいい男子、ガリ勉君が、委員長になっていた。

元委員長の机と椅子は、どこにもなかった。


昼休み。廊下で、前から来るのは、女の子三人組。

ぺちゃくちゃ、あーだこーだ、お喋りしてて。

すれ違う時、ひとりが、わたしの肩にぶつかった。

それなのに、謝りもしないで、他の子達と、ぺちゃくちゃ、あーだこーだ、お喋りしてて。


あ、ムカつく。


ごしごしごし。ごしごしごし。ごしごしごし。

まとめて3人消してみた。

すっきりした。

あの3人、先輩だったみたい。どんな「辻褄あわせ」が起こったんだろう。

どうでもいいから、調べたりしないけど。


5時間目。先週の数学のテストが返ってきた。

中学生になってから、どんどん悲惨になっていくのが数学。

国語はまだしも、暗記物の社会や理科はまだしも。

数学と英語は、完全に、ついていけなくなっていた。

このテストの点数欄にも、わたしにとっては悲しい数字が書かれていた。

昔は、100点満点が、当たり前だったのに。

「ねえ、除消。何でも消せる、って前に言ってたよね?」

声を潜めて、机の上で仰向けに寝転がって、いびきを掻いていた除消を起こす。

安眠を妨げられた除消は、不機嫌そのもの。神様のくせに、なに寝ぼけてんの。

「お願い。この世の中から、数学と英語、消しちゃって!」

「ムリ」

ぐぅぐぅぐぅ。がぁがぁがぁ。

わたしは、仰向けで大の字に寝ている除消の無防備なお腹に、おもいっきり(他の子に気づかれない程度に)、右肘を叩き落としてやった。

「ゴエッ」

長い両腕でお腹を押さえ、悶えている除消。なんか、息が出来ていないみたい。

「テ、テメエ、ゲホッ、消サレテエノカ、コラ!」

ぜえはあぜえはあ。

荒い呼吸で凄んでくる除消。

「できもしないこと言うんじゃないの。わたしを消しちゃったら、除消、永遠に上界へ戻れないじゃない」

「……グ」
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