恋した鬼姫
セラは、婆やがいる部屋へ訪れた。ノックをして婆やに声をかけた。

「婆や、いる?入ってもいいかしら?」

「あら、姫様?どうなさったのですか?」

婆やは、そう言うと部屋の扉を開けた。セラは、婆やの部屋に入ると椅子に座り、さっき会ったハンスのことを話した。

婆やは、何か知っているようだが、あまりいい顔をしていなかった。
そして、婆やはセラが驚くようなことを告げた。

「実は、姫様。私も先ほど王様と王妃様に知らされたのですが、姫様の婚約者を決めるパーティーが明日開かれてるそうです。」

「婚約者?!私は、そんなこと聞かされていませんよ?」

婆やは、王様と王妃様がセラが必ず嫌がると思い、婆やに口止めをさせていたが、婆やはその約束よりも我が子のように可愛いがっていたセラを裏切るようなマネは出来なかった。
だから、婆やも長い時間悩んでいた。
セラは、そんな婆やの気持ちをわかったからか、気持ちを落ち着かせた。

「では、先ほどのハンス様も私の婚約者の候補の方なのですか?」

「えぇ、とくにハンス様は、将軍様の甥っ子と言うだけでなく、素晴らしい能力を持つ角をお付けになっていらっしゃるそうで、姫様の婚約者として認められる候補として一番有利かと思われます。ただ、家来たちが言っていましたが、少々性格に問題があると聞きました。」

婆やは、姫様に幸せになってもらいたく、パーティーにくる候補達のことを調べておいたのだ。

「私も少しですが話をしましたが、ハンス様はどうも苦手です。だからと言って私のワガママでパーティーを止めるわけにはいきませんね。出席します。」

セラは、立ち上がった。

「姫様。ですが、パーティーに出席なされたら…。」
「大丈夫です。出席をしてはっきりとお断りしますわ!」

セラは、笑顔で言った。婆やは、強くなったセラの意思に嬉しくも誇らしく思えた。

< 15 / 71 >

この作品をシェア

pagetop