恋した鬼姫
セラとお婆さんが楽しく買い物をしていると遠くの方が騒がしくなった。
「何の騒ぎかね?」
お婆さんが遠くの方へ目をやると馬に乗った侍達が威張り散らして、こちらの方へ向かって来ていた。
侍達は、お金も払わず強引に店の食べ物を食べたりしていた。

「また、あいつらだ!ここ最近よく店を荒らしにくるんだよ。」
お婆さん達が買い物をしていた店の主人が言った。
お婆さんもセラを連れて急いで帰ろうとした瞬間、一人の侍が呼び止めた。
「おい、そこの者!今、我々を見て逃げようとしただろ!」

「いえいえ、滅相もございません。私事で急ぎの用事が出来ましたので、ちょうど帰ろうとしただけでございます。」
お婆さんは、慌てて言った。

「ふんっ!まぁ、よい。さっさといけ!」

お婆さんは、ホッとしてセラを連れて行こうとしたその時、

「待て。そこの娘、なぜ顔を隠している!無礼だぞ!」他の侍が、また呼び止めた。

「申し訳ありません。この子は、とても恥ずかしがり屋で…。」

「お前に聞いているのではない!娘に聞いているのだ。」
だが、セラは黙ったままだった。侍達は、イライラした口調でセラに傘を取るように言った。
お婆さんは、必死にセラを庇ったが、余計に侍達をイライラさせる一方になってしまった。

「いい加減我らに逆らうと女、年寄りであろうと切り捨てるぞ!」

セラは、それを聞くと、そっと傘に手をやった。お婆さんは、慌ててセラを止めたがセラは、自分のせいでお婆さんを危ない目に遭わせたくなかったのだ。

そして、セラは傘を取った。

侍達は、セラの姿に驚いた。侍達だけでなく、周りの人々もセラに釘付けになった。

お婆さんは、慌ててセラにまた傘を被せようとした瞬間、一人の侍が馬から降りた。

「待て!その娘は、なんだ。もっとよく顔を見せよ!」
侍は、お婆さんとセラに近づいて来た。セラは、怖くて侍のことを見ることが出来ず、目を逸らしていた。
「美しい娘だ。それに変わった目の色をしている。城に連れて帰れば、殿から褒美が頂けるぞ!」

侍は、セラの腕を掴み強引に連れて行こうとした。
「お許し下さい。私のたった一人の孫でございます。連れて行かないで下さい。」
お婆さんは、必死に侍に掴みかかった。セラも必死に手を振り払おうとした。
< 27 / 71 >

この作品をシェア

pagetop