カラス君と黒猫さん



(・・・・・・・黒猫さんはずっとこんな拘束に5年間も耐えてたの?)


だとしたら、何で。

黒猫さんだったら、とっとと相手を引っ叩いて猫みたいに逃げる人なのに。




「琴羽も、俺が何しても抵抗した事ないよ」



ちがう、




俺は、見たんだ。


黒猫さんが震えて泣いてる所を。




「黒猫さんは抵抗できなかったんだろ?」

「は?」

「俺は見たんだ、黒猫さんはいつも泣いてた」

「・・・・・・何言ってるの?」

「・・・・・・・・・あなたが黒猫さんを犯したりしなかったら、黒猫さんはもっと違う笑い方してくれてたかもしれない」



自分の“本当”がばれてしまわないように、黒猫さんはあの時俺に“笑った”。




「・・・・・・黒猫さんは心を殺してるんだ、」


自分に大きい壁を建てて、仮面を被って、“本当”を押し殺して、“自分”を作り上げた。




「お兄さんが見ている黒猫さんは、つくられた黒猫さんだ」


俺はあれだけ哀しそうな笑い方をする人を見たことが無い。



俺のつまらない“日常”をぶち壊してくれた黒猫さんを、助けたい。






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