問題山積み

チェーン店の安い居酒屋は、若者の味方。
私達が勤めるカジュアルウェアのお店が入っているビルの、隣のビルの5階――月に1度の飲み会は、決まってここで行われる。


「かんぱーい!」


4つのビールジョッキが、小気味よい音を立てて弾けた。
すぐさまジョッキに口をつけると、冷たい苦みが喉を下っていく。


「いやー、今日もクローズ遅くなっちゃったねえ」


一気に飲み干した店長の新倉さんが、にこにこ笑いながら言った。
この人は男の癖に威厳だとかそういった類のものが一切見受けられなくて、いつも穏やかに笑っている。
優男という言葉は、多分、この人の為にある気がする。
店長としては好きだけど、男としては苦手なタイプ。
接客業には、新倉さんみたいな人こそ向いているとは思うけどさあ。


「そりゃ仕方ないでしょ、新倉さんが接客してたお客さんがTシャツ1枚で30分も悩むから」


嫌味をさらりと言うこの淡泊な男が、私と浮気している有村さん。
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