とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『どうぞ。』
リサの声に暫し考え込んでいた右京が顔を上げた。
『ああ、ありがとう…。』
右京が案内された部屋のドアノブに手を掛けたところで、『ねぇ』とリサに呼び止められた。
『クロウがここに居るって事は、シノブは留守番かしら?』
『ん。暇だから仕事してるって言ってたけど…。』
『…行っても迷惑じゃないかしら?…あっ、べ、別にそ、相談とかそんなんじゃないんだからね!』
思わず意外そうな表情をしてしまった彼を見て、リサは慌ててそう捲し立てる。
…ったく、素直じゃねぇな…
笑いたいのを堪えて右京は『大丈夫じゃねぇ?』と素っ気なく返すと、そのまま扉を開いた。
彼が部屋の中に入ったのを確認してから、リサは独り跳び跳ねながらエントランスへと引き返して行った。