イケメン大奥

どうも群がった少年たち、青年たちの中で、経験をもつ先輩が椅子に座ることが出来るらしい。


仕方がないので、あたしは床に体育すわり。


仲の良い者は楽しそうに話し合って、仕事に向かっている。ここは休憩室なんだね、おそらく。でも、あたしは何をしたらいいんだろう……?

ぼんやりと体育すわりをしているとオランウータン顔の青年があたしの前に立って見下ろしていた。

その手にはモップとバケツ。


「新入り、この詰所をとりあえず掃除しとけ」

「はい」

答えた声が高かったせいか、「女みたいだな」と周りから囃し立てられる。まるで転校生が来たような、珍しい物を見る目つきに囲まれる。


「お前さ、やっぱり携帯のメール、クリックして来たの?」

大奥で働く者たちも、そうしてここに来たんだろうか。よく分からないので返事だけしておく。

「はい」

年若い少年たちは、オランウータン顔に持ち場へ行けと命じられて散っていく。


「あ、あの」

怯えているとオランウータン顔は、にかっと口を大きく開けて笑った。

「俺は政(マサ)覚えやすいだろ」

「う、は、はい」

とび職とか大工とかに多そうな名前。なんて想像していたら、また顎をつかまれた。殴られるのかと思いきや、

「うん、結月、お前可愛い顔しているよな」

と、にやけつつ言われた。


もしかして、そっちの男色の方なんだろうか???

あ、あたしにはそっちの趣味はありません……。



しかし何となく、この詰所のボスのようなマサ。

「不束者ですが、よろしくお願いいたします」

素直に頭を下げて、モップとバケツを手に早々に退散した。


男ばかりだから、女の子のような(女なんだけど)子は、その手の欲望のために狙われるのかしら。

あたしの今後が、かなり心配。でも少しの我慢だ!!



< 125 / 190 >

この作品をシェア

pagetop