イケメン大奥
「大奥にはなぜ、……奥様はいらっしゃらなくなったの?」
あたしの声は緊張で震えていた。
その心の怯えや不安定さは、そのままキヨやハルに伝わってしまう。
しっかりハルの知っている事を訊きださないと。
「申し上げます」
「はい」
「妻は大奥にて心不全を起こしました。
表の世界でも身体の弱い者でして、大奥に来てからは、
体調が良いとの事でした……わたくしは健康になってもらいたい、
その一心でありました……」
ハルの平伏した姿の上に、キヨが問いかける。
「どんな方法を使って、大奥に呼び入れたんだ?」
「貴方様が上様をお呼びになったと同じ方法でありますよ」
ハルも、奥様とコンタクトを取って、大奥に導き入れたのだ。
キヨが腕をさする。
罰せられた出来事を思い出したように。
「廊下ではなんですので、
どちらかゆっくり話せる場所を設けていただけませんか」
あくまでも冷静なハルに、
あたしは圧倒されていた。
「妻の事を上様にお話させていただいたほうが、
よろしいでしょうから」