イケメン大奥

「大奥にはなぜ、……奥様はいらっしゃらなくなったの?」

あたしの声は緊張で震えていた。

その心の怯えや不安定さは、そのままキヨやハルに伝わってしまう。


しっかりハルの知っている事を訊きださないと。

「申し上げます」

「はい」

「妻は大奥にて心不全を起こしました。
 表の世界でも身体の弱い者でして、大奥に来てからは、

 体調が良いとの事でした……わたくしは健康になってもらいたい、

 その一心でありました……」


ハルの平伏した姿の上に、キヨが問いかける。

「どんな方法を使って、大奥に呼び入れたんだ?」


「貴方様が上様をお呼びになったと同じ方法でありますよ」

ハルも、奥様とコンタクトを取って、大奥に導き入れたのだ。


キヨが腕をさする。

罰せられた出来事を思い出したように。


「廊下ではなんですので、

 どちらかゆっくり話せる場所を設けていただけませんか」


あくまでも冷静なハルに、
あたしは圧倒されていた。

「妻の事を上様にお話させていただいたほうが、

 よろしいでしょうから」



< 176 / 190 >

この作品をシェア

pagetop