君を忘れない。
私は恐怖と不安から、すがる様に一平さんに飛び付いた。
そんな私を一平さんは予測出来ていたのか、怯むことなく抱き止めた。
「大丈夫。飛行機じゃない。」
「でも…!」
真っ暗闇の中で、聞こえる一平さんの鼓動。
それがだけが、私の安心材料。
「静かに。よく聞くんだ。天の音を。」
一平さんに言われた通りに、鳴り止まない雷の音に耳を済ます。
低く響く雷の音と、土砂降りの雨が屋根に当たる音。
よく聞くと、全く違う。
空襲のときは、こんなもんじゃない。
「空が…泣いているのでしょうか。」
人間の、愚かな様を見て。
容赦なく破壊される、地球の姿を見て。
「それとも、怒っているのかもしれませんね。」
空はいつでも大きく、ずっと変わらずにいるのに。
人間は変わってしまったと。