木漏れ日から見詰めて
第二章 君塚洋輔

1.放課後の教室

 胸騒ぎがして学校へ引き返した。

 第6感や霊感など目に見えないものを信じる性質じゃないんだけど、紺野さんのことが気がかり。

 彼女が悩んでいるのは間違いない。

 きれい好きなのか熱心に掃除をするタイプだけど今日は同じところをずっとホウキで掃いていた。

「紺野さん、先に帰るよ」
 声をかけると紺野さんはぼくの方を見向きもしないで軽く頷いただけだった。

 いつもなら生返事くらいはかえしてくれるけど、さすがに元気がない。

 原因ははっきりしている。

 紺野さんは数学の菱沼先生をいつも見詰めている。

 机の上で組んだ両手に顔を固定して視線を逸らさない。

 憧れだけでは片付けられない彼女の表情。
 
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