色をなくした世界
雄大の言葉に青山が肩を落とすのが見えた。


「俺から頼んだのにあれだが・・・・本当に行くと決まると寂しいものだな」


期間は決まっていない。一年後には戻ってくるかもしれないし、十年後になるかもしれない。もしかしたら向こうに永住の可能性もある。


それでも良いと思い決めた事だ。


「青山さんからそう言ってもらえると嬉しいですよ」


雄大が入社した時から育ててくれたのは間違いなく青山だった。


仕事の事を一から教えてもらった。叱られる事も多々あったが、無理難題を言わず厳しくも優しい上司。


「青山さんには迷惑かけっぱなしで・・・・せめて向こうで役に立てるよう頑張りますよ」


そう笑う雄大を青山は親が子どもの成長を見たように、目を細める。


「そんな事・・・百年早いよ」


頭を小突きながら、少しだけ青山が涙目だったような気がする。



「それでいつから行く?」



できるだけ早くきてくれと言われていると聞く・・・。


雄大自身早くここから離れたかった。



「・・・・・できれば今週中にでも」



そう言った雄大を青山は驚いてみる。
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