色をなくした世界
「今週って・・・あと三日しかないぞ?そんな急がんでも・・・・」


送迎会もできない・・・・そんな事を呟けば雄大の目は遠くを見ている。


長年の勘か・・・青山には雄大に何かあったと気付く。


「そんなに早く離れて・・・お前は何から逃げたいんだ?」


会社の上司としてでなく、人生の先輩として青山は聞いた。


「そこまで急いで・・・・お前はここに何を置いていくんだ?」


どうせ雪乃の事だろうと思う。


雪乃を働かせてほしいと頼んできた時は、どんな女を連れてくるのかと思っていたが・・・とても気の付く優しい子を連れてきた。


そして雪乃に対する雄大の態度を見ていれば、気持ちなど一目瞭然だった。


(まぁ・・・・上手く隠してるつもりだったみたいだけどな・・・)


ただ・・・気付いていないのは雪乃と鈍感な者くらいだろう。


初めは雪乃を狙っていた社員も、雄大の存在を見て諦めたものは結構多いと聞いていた。



「何も置いて行ってませんよ?」



年の割に誤魔化す事の上手い雄大が、無理に笑うが・・・



「顔に出てるよ。誰にも言わん。何があった?」


青山の目が優しかったせうだろうか・・・・雄大は雪乃との間に合った事を省略しながらも話した。
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