色をなくした世界
目覚めてからは正に目が回るような忙しさだった。



引っ越し屋に荷物を頼み、荷物と一緒に梓も運んでもらった。



一人になった部屋を最後にもう一回キレイに掃除してゆく。




動かさなかった家具の後ろにはやはり埃がたまっていて、結構な埃の中生活していたんだなと笑いがもれる。



全部の部屋を掃除し終えると、この部屋を見にきた時のようにキレイになった。



初めて見にきた時、部屋から見える桜に目が奪われここに即決した。



今はあの時みたいに桜は咲いていないが…和哉とこの部屋で過ごした日々は何よりもの宝物だ。




いつまでもここにいたいが…そうも言ってはいられない。



最後に部屋をぐるりと見回すと、雪乃は元気よく部屋を出ていった。



「行ってきます」


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