色をなくした世界
無理やり口を上げられる。


「笑え笑え!!!笑ってれば嫌な事なんて自分には起きていないって思えるはずだって」


「和君が言ってたんでしょ?」


雪乃がよく和哉に言われた言葉。懐かしいなぁと思う。


「泣いてるとよく言われた・・・笑えって」


無理にでも笑っておけと、脇の下をくすぐられた事もあった。


「和君て無茶苦茶な所・・・あったよね」


思い出すのは楽しかった事ばかり。嫌な事もあったはずなのに・・・今は何一つ思い出せない。


「ほら!暗い顔になってる!!!和哉みたいにくすぐったらセクハラになるから、自分で笑いなよ」


セクハラってと雪乃は笑っていたが・・・青山に見つかれば確実にセクハラ決定で海外出張に行かされる・・・。


「何か・・・雄大君には励まされてばかりだね?もう助けてもらい過ぎてて・・・何も返せないよ」


そう笑う雪乃に、雄大は君が笑っていてくれれば・・・それだけで良いんだと思う。


君が笑ってくれるなら・・・できる限りの事をするのに。


けれど雪乃を心から笑わせる事ができるのは和哉だけ。


泣いている雪乃を一瞬で笑顔にできるのも和哉だけだった。
< 33 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop