彼は、理想の tall man~first season~

「じゃあ、早くコンパが出来るように、頑張ってね!」

「ちょっと、それが目的?」

「違うけど、当たってる」

「もう! あ、智子、気を付けて帰ってね」

「美紗もねー」

「うん。今日は、本当にありがとね」

「いつでもかかってこいだよ」

じゃあね――と、I駅で別れ、人の合間を縫いながら、ホームへと向かった。

電車に揺られながら、思い出したのは、中條氏の純度100%の爽やかな笑み。


相当やられていると思った。

それが、さっき飲んだお酒の効力でなのか、中條氏の効力でなのか。

間違いなく後者の効力だ――とは思っても、それを素直に認めたくないと思っている自分がまだいたり。


私が恋をするとか、本当にあり得るのか?

たまたま中條氏がどんぴしゃに理想だったってだけで、そういう錯覚を起こしているだけなんじゃ――と、考えたり。

でも、あの日別れてから、また会いたいと思ったのは、錯覚でもなくて。

ごちゃごちゃ色々考えてしまう自分を、らしくないと思った。


こんな感じは――かれこれ、本当に中坊の時以来な気がした。

あの頃、あいつが好きだったのに、あと一歩の所で踏み出せなかった恋。
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