彼は、理想の tall man~first season~

「ねぇ――私、直ぐにでも寝たいんですけど」

「はい、却下」

そんな会話をした後、玄関を開けた尚輝は、酒臭ぇな――と、靴を脱ぎながら私に言葉を寄越した。

お酒を飲んだんだから当たり前じゃん、と軽く膨れつつリビングに向かうと――。


「お邪魔してます」

聞こえて来たのは、当たり前だけど中條氏の声で。

相変わらず爽やかな笑みが、そこにはあった。


「こ、こんばんは」

連絡頂いていたみたいで、すみません――なんて、目に映る中條氏に頭を下げた。

本人を目の前にすると、不思議と酔いが醒めていく感覚。

それから二三言葉を交わして、取り敢えず私は部屋に着替えに入った。


明日、車の件で松本さんの所に一緒に行くんだったと改めて思いながら、OLモードの服を脱いで、部屋着にチェンジ。

途端、一気に脱力感に見舞われベッドに腰を下ろした。


――はぁ。

思わずそんな溜め息が漏れる。

結い纏め上げていた髪の装飾品を外して、更に脱力感に見舞われ体をベッドに倒した。


何も考えずに、このまま寝てしまいたい。


晃と飲んだ後に中條氏――。

あんな話をした後だったから、中條氏に会うのは正直しんどかった。
< 166 / 807 >

この作品をシェア

pagetop