彼は、理想の tall man~first season~

目を瞑ると、頭の中だか目なんだかが、グルグルと忙しなく回っている。

完全に飲み過ぎたと、その感覚で自覚していた。


新しい恋、か――。

始まりそうだったその気持ちには急ブレーキが掛かっていた。


好きでもない女は抱かないと、そう言っていた意外にも純情だった晃の言葉が、頭の中でリフレイン。

知った気持ちと思い出した気持ち。

半端な気持ちで新しい恋に突き進むなんて出来ない――そう思った。


当時は諦めた気持ち。

けれど、それがタイミングの悪さでのことだったと知った今、私の気持ちはそれなりに揺らいでいた。


今まで付き合った相手に、心も体も全てを開ける相手は確かにいなかった。

私が抱き続けている身長のコンプレックスと、相手も抱くそれ故のコンプレックス。

うまく行かない原因はそこにあると思っていたけれど。

私の中での1番は、根っこの部分ではやはり晃だった――からなのかな?

でもだからといって晃に――とか、踏み出せる訳でもない。


「あぁー本当に、よくわからなくなって来たなぁ」


ベッドの上で仰向けに寝てそう叫んでいたら――。
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