彼は、理想の tall man~first season~
「尚輝・・・・・・私、先に帰ってるね」
「ん? 俺もそろそろ帰るからちょっと待ってろよ。美紗、お前荷物は?」
「中條さん、長居してすみませんでした。ありがとうございました」
荷物取らせてもらってもいいですか?
そう聞いて来た彼女の瞳は、何かに脅えているようで、消えてしまいそうな弱さを感じた。
それは、鋭い兄貴の尚輝も感じ取ったようで――。
「美紗、どうした?」
彼女に近付いて、尚輝は彼女の顔を覗き込んでいた。
「なんでも・・・・・・ない」
「なに、晃と喧嘩したか?」
「もうアイツとは絶交した」
「ふっ、絶交ってお前、小学生かよ」
「だって・・・・・・」
「だって、なんだよ?」
「なんでもない。兎に角、もう帰る」
「ああ、分かった」
2人は同い年――――だけど、膨れる妹を宥める優しいお兄ちゃん、そんな雰囲気。
荷物をまとめて尚輝と玄関に向かった彼女は、やっぱりどこか様子がおかしかった。
晃となにかあったって、雰囲気からバレバレで。
晃は部屋から出てくる気配が全くなかった。