彼は、理想の tall man~first season~

「中條さん、聞いてますぅ?」

「――――」

「麻倉君もぉ」

「――――」


やはり、仕事の疲労以上の、妙な疲労感が全身に広がる。

本当に、早く帰ってくれねぇかな。

俺と尚輝は完全にシカト。

お互いに相手にするのもどうかといった具合だ。

この店に入った直後、尚輝が声を掛けた店員もしくは店主が、「美紗なら今裏にいる」と、そう言っていたが――。

早く会えないものかと、そう思いながらやり過ごしていると、尚輝の所へひとりの女の子が屈み腰でやって来た。


「尚君!! 久し振りっ!!」

「あれ、トモちゃん?! 超久し振りじゃん。来てたの?」


うんうんと頷いている女の子を見て、どこかで見たことがあったか――と、考えた。


「ひとり? あ、もしかして美紗と来たの?」

「ううん、彼氏と一緒に」

「あれ、彼氏出来たの?」

「うん。尚君も会ったことあったよね?」


彼女が視線を動かした先には、こちらを見ているひとりの青年の姿があった。


「あれってマ-シ-だよね?」

「うん」

「いつの間に――っあ、でも美紗から聞いたことがあった気もする」
< 442 / 807 >

この作品をシェア

pagetop