彼は、理想の tall man~first season~

和君にまでそんなことを言われて、私は戸惑った。

――5卓にいなかったから、もう既に帰ったものだと思っていたのに。

敦君も尚輝も、智子とマサ君と一緒に飲んでるの?

ってなると――あの彼女達も一緒?

そう考えると、忘れていたのに胸がちくちくして、私は返事に困った。


「中條さん、美紗がピアノ弾いてた時、うちらの席の奥の所から、見てたんだよ」

「――え?」

智子が言っているのは、ピアノの位置から見て、ホールの右奥の隅っこに灰皿が置いてある場所かな。

そう思って、自然と視線をそこへ向けた。

だけど、その方向を見ると、マサ君達のテーブルがその線上にあって。

私の視界に映ったのは、尚輝とマサ君と敦君――男3人がテーブルを囲う姿。


さっき一緒にいた彼女達は、一体どこに?

そう思っていると――。

敦君と目が合った気がして、私は軽く頭を下げ、智子に視線を戻した。


「ね、智子――女の人達は?」

「女の人達? あー、あのケバケバな人達のことー?」

「うん? 綺麗めな感じの人、だけど」

「その人達なら、いつの間にか帰ってたよ」
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