彼は、理想の tall man~first season~
まぁ、プールを買うなんて普通は無理だから、冗談なんだろうけど、本当に冗談に聞こえなかった。
「体も鈍りかけてるし、ジムにでも行こうかな――つっても、時間的余裕がないのが現実なんだけど」
「そうですよねぇ」
一緒にスポーツジムとか?
いや、一緒にテニスとかならいいけど、トレーニングしている姿とか見られるとかって。
ないなと思って思い浮かんだ案は口には出さずに、頭の中で即却下した。
こうやって、徐々にお互いを知るのも、悪くないかも。
会えない――連絡も取り合わない日は、不安で思考も後ろ向きになるけど。
こういう時間は、考え方が上を向く。
まぁ、尚輝に言わせれば、単純なんだろうけど――。
「あれ、そう言えば、今日煙草吸ってないんじゃない? 止めたの?」
「止めてはいないですけど――吸わないお酒の席ってどうなのかなって、人体実験中な感じです」
「なに、それ、随分面白いことしてんね」
「そうですか?」
「吸いたくならないの?」
「なります――でもそういう欲求って、一時的に数分間みたいなので。今はその欲求が通り過ぎるのを待ってます」