彼は、理想の tall man~first season~
「美しいに、紗(うすぎぬ)で」

「美女の美に、糸へんに少の字?」

「糸へんに少で――はい、そうです」


中條氏が漢字を言い、それを聞いた松本さんが、私に聞き返すという、変な流れで会話が成り立っていたけど、流石に美女の美には賛同出来ない。


「美紗ちゃんか。名前の響きがいいね」

「――ありがとうございます」

「で、2人はどういう関係? 美紗ちゃんは中條の彼女?」

「えっ、それは「違うよ」


『違います』って否定をしようとした時、中條氏が喰い気味に言葉を被せ、キッパリと松本さんに否定した。


「え、なに、違うの?」

てっきりそうなのかと思った、と――松本さんは、私と中條氏を交互に見る。

目下戸惑い中の私を余所に「まだな」と、隣からそう聞こえて来て、中條氏は松本さんを見返し、私の心拍を乱す発言をした。


「へぇ“まだ”なんだ。ふぅ~ん。ねぇねぇ、美紗ちゃん」

「は、はい?」

「今ならまだ間に合う。悪いことは言わないから、中條だけはやめといた方がいいよ」


「え?」
「オイ」


「うちの奥さんも、中條に泣かされたくちだから」

「――えぇっ?」


松本さんの言葉に驚いて中條氏を見ると、「嘘を吹き込むなよ」と、少し不機嫌にそう放った。
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