償いノ真夏─Lost Child─
あの村の誰もが、真郷を異端として見ていたような気がする。
そんな中で、真郷の遊び相手になってくれた少女がいた。
名前は憶えていない。
しかし、その少女の姿は、今でも鮮明に思い出せる。
切り揃えられた黒い髪、白いワンピース、大きな目をした笑顔が愛らしい少女。
あの少女にもう一度会えるなら、母の実家に行くのも悪くはないと思えた。
それが正解だったのか、間違っていたかは分からない。
「──名前も、知らないのに」
幼かったあの頃の彼女と、今の彼女が同じとは限らない。
向こうは自分を憶えていないかもしれない。
それに
「今もこの村に居るかなんて、分からないじゃないか」
自嘲気味に呟いてため息をつく。
直後、背後の戸が小さくノックされた。