償いノ真夏─Lost Child─


それは幼い頃の記憶。

朝霧小夜子は、ときどき、あの夏の日を思い出す。

その日は、家族で川に遊びに行く予定だった。小夜子はそれが楽しみで、お気に入りの白いワンピースを着て、はしゃいでいた。

だが、そんな時に弟の夏哉が熱を出してしまった。当然、遊びに行く計画もなくなり、両親は弟の看病に追われた。

それなら、熱で苦しんでいる夏哉の傍に居てやりたかったが、両親は小夜子を近付けるのを拒んだ。


「夏哉の風邪が移るといけないから、小夜子はお外で遊んできなさい」


母にそう言われ、小夜子は仕方なく外へ出掛けたのだ。


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