償いノ真夏─Lost Child─


御夜叉祭りの巫女には、身体のどこかに蛇の形の痣ができるという。

それは『オシルシ』と呼ばれ、本人の意思とは関係なく現れる。

──それは、中等部の卒業式を控えた春の出来事。


「これ……」

鏡台の前で小夜子は目を見開いた。鏡に映った彼女の首の辺りには、うっすらと蛇が巻き付いているような痣が浮かんでいる。


「まさか、オシルシ……?」


昨日まではなんとも無かった。それなのに。

「違う。だって私、まだ十八になってない……」

オシルシは十八を超えた女にしか現れないのではなかったか。

まだ、小夜子は十五だ。
その小夜子に、オシルシが現れた。

小夜子はその痣をが見えないように包帯を巻いて、首の隠れる服を着た。
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