償いノ真夏─Lost Child─
「やっぱ都会のヤツは自信過剰、ムカつく」
男子生徒がそう吐き捨てた時、彼の腕を引き留めるように第三者が引っ張った。
きょとんとする彼を見て何事かと思っていると、彼の背後から見覚えのある女生徒が姿を現した。
「朝霧さん!?」
彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「うちの弟が失礼なこと言って、本当にごめんなさい」
「えっと……弟さん?」
「うん、六年生。本当は悪い子じゃ無いんだけど、ちょっと難しくて」
弟らしき男子生徒を見ると、朝霧に見つかってひどく狼狽したようだった。
「オレは姉ちゃんのためを思って……」
「だけど目上の人に、そんな乱暴な言葉遣っちゃダメよ。ほら謝って」
朝霧は男子生徒の背を押した。
彼は渋々といった様子で、真郷に向き直る。
「さっきはスンマセン。……朝霧夏哉(アサギリ ナツヤ)です、オレの名前」
「こちらこそ。俺は──」
「名前なら知ってます。深見真郷でしょ。でもオレ、まだアンタのこと認めた訳じゃないから。……じゃ」
言いたいことを言って片手を軽く上げると、夏哉はその場から去って行った。