償いノ真夏─Lost Child─

席を立って辺りを見回すと、教室内には既に朝霧の姿は無かった。

教室を出た所で、勢いよく誰かにぶつかった。


「……ごめん」

反動で転んでしまった相手に手を差し出す。

尻餅をついていた男子生徒は、一瞬驚いたように真郷を見た。

それから勢いよく立ち上がると、廊下の真ん中であるにも関わらず、

「アンタが噂の転校生?」


まだ因縁をつけられるような所業はしていないのに、と真郷は眉を寄せた。

「──噂?」

男子生徒は真郷をじっと見つめる。


「都会から来た金髪の美少年。おまけに深見屋敷の子。──これで噂にならないわけねーじゃん」

「ああ、そういうことなら仕方ないか」


真郷はうんうんと頷いた。その様子を見て、男子生徒は苛立った表情に変わる。

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