償いノ真夏─Lost Child─





自覚がなくとも、人は疲労を溜めていることが多い。

朝陽を浴びても、真郷は目を開けるのが億劫でならなかった。


「真郷坊っちゃん、朝食が冷めてしまいますよ」


障子の向こうから聞こえた声の主は、おそらく住み込み家政婦のフミ子だ。

「……はぁい」

真郷は甘えたような声で返事をすると、起き上がって伸びをした。

フミ子には、実の母より母親らしさを感じていた。

母は、母親ではない。
あれはただの女に過ぎない。

フミ子に心を許せるのは、彼女から雌の匂いを感じないからだろうか。


< 34 / 298 >

この作品をシェア

pagetop