償いノ真夏─Lost Child─
あの母が、まさかそんな事を言うなんて。
真郷は複雑な思いで椅子に腰かけた。
目の前のトーストに、瓶から取り出したルビー色の苺ジャムをたっぷりと塗る。
瓶にラベルが無いことから、やはりこれもフミ子の手作りなのだろう。
トーストを一口かじれば、こおばしい香りと甘酸っぱい絶妙な味が広がった。
「……真郷坊っちゃんは、甘いものが本当にお好きなんですね」
「──え?」
フミ子は上機嫌な笑顔で、それもお嬢さんから聞いたのだ、と言った。