償いノ真夏─Lost Child─
その漆黒の瞳が、真郷の姿を映す。
どきり、と心臓が跳ねた。
「そういえば、深見くん傘忘れちゃったの?」
「うん……持ってけとは言われてたんだけど」
「ふふ。意外とうっかりしてるんだね」
小夜子はふわりと笑うと、真郷に向かって藍色の折り畳み傘を差し出した。
「──ナツに渡そうと思ってたんだけど、役に立って良かった」
どうぞ、と言われ、真郷は傘を受け取った。
「あ……ありがとう」
小夜子は頷くと、その傘と色違いの赤い傘をひろげる。
「あの……朝霧さん」
くるり、と彼女が振り向く。
真郷は自分の顔が熱くなるのを感じていた。
「良かったら……一緒に帰らない?」