償いノ真夏─Lost Child─

その漆黒の瞳が、真郷の姿を映す。

どきり、と心臓が跳ねた。


「そういえば、深見くん傘忘れちゃったの?」

「うん……持ってけとは言われてたんだけど」

「ふふ。意外とうっかりしてるんだね」

小夜子はふわりと笑うと、真郷に向かって藍色の折り畳み傘を差し出した。

「──ナツに渡そうと思ってたんだけど、役に立って良かった」

どうぞ、と言われ、真郷は傘を受け取った。

「あ……ありがとう」


小夜子は頷くと、その傘と色違いの赤い傘をひろげる。

「あの……朝霧さん」


くるり、と彼女が振り向く。

真郷は自分の顔が熱くなるのを感じていた。


「良かったら……一緒に帰らない?」

< 41 / 298 >

この作品をシェア

pagetop