償いノ真夏─Lost Child─
夏哉はタオルで仔犬を包むと、身体を擦ってやる。
「──捨て犬?」
「たぶん。でも家には連れてけないじゃん。でも放っといたら死んじゃうだろ、コイツ」
どうやら夏哉は、この雨の中、犬が濡れないように庇っていたらしい。
真郷は、その仔犬に同情した。
自分の力では生きていけない弱い生き物。
誰からも見捨てられ、それによって異端視される孤独な生き物。
「どうしよう……」
困り果てている小夜子に、俯いて黙ったままの夏哉。
「……夏哉くん、その仔犬、俺に預けてくれないかな」
「──あんたに?」
顔を上げた夏哉は心底驚いたようだった。
「俺の家は深見屋敷って呼ばれてるくらいだから、そいつが大きくなっても心配いらないし。かなり衰弱してるから、早く暖めてやらないと危ないみたいだ」
「……!」
真郷の真剣さに圧され、夏哉は仔犬を差し出した。
「……頼みます、深見さん」
「うん。──朝霧さん、傘とタオル、借りてくね」
それだけ言って、真郷は家に向かって駆け出した。