償いノ真夏─Lost Child─
腕の中、仔犬の身体が震えている。
小さな命。
夏哉が、必死に守ろうとしていた命。
走って走って、やっとの思いで自宅に転がり込むと、真郷は風呂場に向かった。
桶にぬるま湯を張り、仔犬の泥を洗ってやる。
怪我などは無いようで、真郷はほっと溜め息をついた。
汚れが落ちると、仔犬は真っ白な美しい毛並みをしていた。
ドライヤーで乾かして、そのまま毛布にくるんでやる。
「柴犬っぽいけど……白なんて珍しいな」
仔犬の震えが治まっているのを確認して、真郷は安心した。
それから、仔犬の為に台所でミルクを温める。
「坊っちゃん、何をなさってるんです?」
「あ、フミ子さん。ちょっと質問なんだけど、赤ん坊ってどのくらいの温度のミルク飲むの?」
「へ?──そうですねぇ、人肌くらいですけれど」
「ふぅん、じゃあ、このくらいで良いかな……」
指で温度を確認し、器に移す。