償いノ真夏─Lost Child─
嫌な汗が、全身を包む。
そんな時、玄関の曇りガラスに影が映った。フミ子は気付いていないようだ。
「ただいまぁ」
少女のように間延びした声が木霊する。
つばの広い、洒落たデザインの白い帽子が、この暑さの中にあっても涼しげだった。
「お嬢さん、お帰りなさい」
フミ子が出迎えると、母は帽子を手渡した。
「やっぱり外は暑いわね。ちょっと歩いただけで、汗が止まらないわ」
そうは言うものの、母はやはり、涼しげな顔を崩さない。
真郷は母を凝視していた。
訊かなければ、訊かなければいけない、と鼓動が速まる。