償いノ真夏─Lost Child─


太陽が照り付ける八月。

夏祭りに行こう、と言い出したのは夏哉だった。

唐突に言われたので、真郷は首を傾げた。

「祭りなんて、あるの?この村」

小さい頃の記憶にも、夜叉淵で祭りに参加したというものはない。

遊びに来るといえば大概は夏なのだから、今まで知らなかったというのもおかしな話だ。


「あるよ、お祭り」


答えたのは、小夜子だった。

「五年に一度しかない特別なお祭り。御夜叉(おんやしゃ)祭りっていうの」

「おんやしゃ?」

眉を寄せた真郷を、夏哉が笑った。

「そっか、真郷は知らないんだよな。御夜叉祭りっていうのは……」


御夜叉祭り、夜叉淵村。

そもそも、この村にはやたらと『夜叉』という単語が付いてくる。

その、由来というのが。

< 70 / 298 >

この作品をシェア

pagetop